2023年12月14日木曜日

学生大会2023

この記事はマイクロマウス Advent Calendar 2023 14日目の記事です。

昨日の記事は、はやぶささんの「ロボット紹介と先輩の話」でした。
先輩と切磋琢磨しながらレベルを上げていき、気付けばロボトレースの上位の世界へいくという非常に物語性のある読んでいて元気になる記事でした。reRoさんはコロナ明けあたりから耳にするようになった団体ですが、牽引している2人をはじめ今回の学生大会ではロボトレースの表彰台を独占するなど勢いもパワーも凄まじいですね。そして当日は観覧席で上から見ていましたが、最終出走のはやぶささんの唯一の4秒台のマシンの走り、会場の盛り上がり、圧巻でした。

さて、今年の学生大会について書いていきます。
※書きたいことを書いたらかなり長くなってしまったので、興味のあるところを中心に読むことをおすすめします。

競技結果

今回は2競技3台のエントリー。結果をまとめると

クラシックマウス Thunder: 優勝
マイクロマウス: Entrance_v2: 第2位 特別賞
マイクロマウス: Lightning: 最短できず

という感じでした。一言でいうと、クラシックは勝ちましたがマウスは負けました。



競技前の調整状況

大会の話に入る前に、軽く東日本大会の後にどのように開発していたかを書いておきましょう。主な開発はハードの動作確認のみ10月に済ませてあったクラシックマウスを実戦投入できるように、そちらのデバッグや調整を進めていました。
Lightningと同じ設計思想で製作したのでこれまで作ったソフトウェアのベースで短期間で間に合わせる...というのが狙いですが、当然そんなスムーズに進むわけもなく。
特にフェールセーフがうまくかからない調整初期に
マシンが暴走する
機体重量21gに対して相当高い出力が出せるので盛大に壁に衝突する
基板厚0.6 mmなので基板がたわむ
ファンが大破しセンサLEDのチップFETの足が折れる
といったハードトラブルに苦しめられ、ファンの在庫が手元に無くなったのでDMM即納で大会2週間切ったあたりに補充。同タイミングで風邪をひいて人間の方が壊れ始め...限界限界。咳が出て頭痛がしても家に迷路はあるので、気力を振り絞って何とか明らかにおかしそうなところは潰してクラシックの方は月曜日ぐらいに調整終了。

書き込みコネクタがもげたあと吸引ファンが大破して絶望する図
(ちなみに左センサLEDも光らなくなった)

翌日に替えのファンをまた割って在庫がなくなり再び絶望する図

そこからマイクロマウスの方の調整を始めたわけですが、以前からわかっていた吸引モーターを回すとIMUの出力になかなか嫌なノイズが載る問題を上手く解決できず。クラシックの方はIMUの周りに防振シートをはめ込むことでかなり改善したのですが、マウスの方はそれはあまり効果を示さずで、どうにかしたいと思いつつ残り時間と人間の残り体力的にどうすることもできず、東日本大会と2週間前のRT試走で走っている実績を信じて大きくは東日本と変わらない状態での参戦、という形となりました。

競技の感想

・クラシックマウス

迷路はこちら。2017年関西地区大会リバイバル。なかなか癖の強い迷路を持ってきたなというのが第一印象でしたね。出題者の方も競技開始時に話していましたが、迷路を隠していたカバー上からもうっすらと見えたロング斜め、これを攻略できるかにかかっている感じでしょう。
出走は午前最後ということで、後半のDCマウスの走りを見てからパラメータを決めるなんて悠長なことはできないので、1717モータを使うタイプのマシンでは逆立ちしても勝てないくらいのパラメータのみ入れた状態で走らせました。全面探索を問題なく完走し、4走とも期待通りのロング斜めを通るルートを選択して無事最短成功。2位の台湾勢の学生とも1秒以上の差をつけて唯一2秒台を出せ無事優勝となりました。

クラシックの大きなサイズ感であそこまで長いストレートを走れると非常に気持ちがいいですね。と言っていたら周りから「あれ本気出してないだろ」とのツッコミが。
あれそうだっけと(パラメータを組んだ時意識がもうろうとしていたのでよく覚えていない)斜めの最高速を確認したところ、3.5~4 m/s。あそこまで長いと最高速度が効いてくるということが分かったので、次は上げておきますね()。ただ部室の普段の迷路サイズだとそんなに出せないし、マシンを壊したくないからあんまりあげたくないんだよな...。今月のRT試走で直進限界性能テストをやってみましょうかね。
一方で斜め3.5 m/sでもあちらのルートしかでなかったということはほかの経路は相当不利なのでしょう。コンマ数秒で競う現在のレースにおいて、経路導出のミスは致命傷になるという非常に良いサンプルだったようにも思います。競技者の中であのルートを選んだのは実は私のみだったみたい(ちなみに海外勢もロング斜め選択してますが、ゴール前の経路が私とは少し違うのでそういったところも着目してみると面白いです)なので、ぜひ、斜め走行ができるようになりタイムを上げられるようになった人は最適経路選択をどうするかについて本格的に挑戦してみてください。こちらとしても良い経路どうしのタイムで撃墜できないとのれんに腕押しというかあんまり手応えがないので。

・マイクロマウス

マウスの方の迷路はこちら。セミファイナル2019と同一の出題。地区大会にしては代表経路がやや長めな迷路でしたね。これという鬼門はないですが、まんべんなくいろいろな動きの要素が入っているので、意外と走りにくいという感じの迷路でしょう。
マイクロマウスの方は最終出走。旧作のEntrance_v2はオートスタート含め5走きちんと完走。経路が長めといえど昨年度のファイナルに比べれば3分の1程度なので、このくらいは問題ないでしょう。
一方、新作Lightningは全面探索は成功させたものの最短走行が1度も決まらないという非常に残念な結果となってしまいました。先に述べたIMUの問題で軌跡の再現性がないのがおそらく一番大きな要因と推測していますが、ほかにもまだ見つかっていない、詰めきれていない明らかにだめな要素がまだまだあるのでしょう。探索も一度明らかに距離ズレをおこしていましたしね。いやーしかし、最低パラメータを3回走らせて一度もゴールしないとは...。最後にボロが出たというかやらかしましたね。

結果的に旧作で第2位、またオートスタート完走と唯一5走完走で特別賞をいただきました。Entranceはやはりそこそこ丁寧に時間をかけて作ってあるので調整していなかった2023シーズンもかなり安定して走っていましたね。新作1位で旧作特別賞で終えられればきれいな形だったのですが...、ちょっとLightningにかけられた時間が短すぎたように思います。
競技全体としても完走率、最短成功率は芳しくなく、ある意味でマイクロマウス競技のシビアさを他の方も感じたかと思います。前からちょくちょく言っていますがトップ層の真の凄さは速さではなくマシンをハード、ソフトともに詰めきったことによって生まれるその動きにあります。もともと難しい競技であることは間違いないので、1つ1つ試行錯誤、相談しながら課題をクリアしていきましょう。というか、私もクリアしなくてはなりません。

ポイントランキングについて

これで今シーズンの地区大会はすべて終了(救済向けの認定大会除く)で、ポイントランキングが確定しましたね。私はマウスは4位、クラシックは5位ということでトップな方々の前座枠になりそうなので、前座を全うできるように怪しい動きを潰すことに専念したいと思います。今のままではレースをする以前にファイナルでは自滅してしまう状態なのでなんとかしなくては...。

ところで、Advent Calendar でけりさんのブログを見てふと思ったので、ちょっとだけポイントの付け方について独り言を。
現状、特にマウスの方はレースがなかなか熾烈でトップの8台くらいが団子になることがよくあります。経路が短いとみんなトップスピードで走れるのでこれが顕著で、東日本大会は1秒台でないと複数ポイントを取ることさえ難しいという状態でした。(その状況作った一員のお前が言うな)そのため、速さにあまり重きを置いていない、あるいはできてそこまで時間が経っていないマシンを製作している人にとっては3地区大会以上を回らないとファイナルに実質的に行くのが難しいというちょっと苦しい状態なように思います。学生の場合は荒らしが少ない&出走台数が多い恩恵で学生大会でポイントが取りやすいという現象(通称:学割)があるのでなんとかなりますが、社会人の場合はそうもいかないのではないでしょうか。

そこでなんですが、ポイントの評価基準に今のタイムの相対評価に加えて絶対的な評価があってもいいんじゃないかな、と思っています。適当に思いつくものだと
・オートスタートを決めたら+1ポイント加点、5走オートスタートなら+2ポイント加点
・特別賞をもらったら+2ポイント加点
・迷路で過去問を利用するのであれば、当時の出走者のタイムから検討をつけて〇〇秒以内なら+1~3ポイント加点
など。Entranceを出していて自律走行やロバスト性を評価したいというところを感じつつあるので、せっかくなら多少実益があったほうが、競技者のモチベーション向上や駆け引きが生まれたりしないかなと思ったりしています。

私は運営のことは詳しくなく完全に思いつきで書いているので的を射ていなければスルーしていただいて構わないのですが、一応こちらに書いておきます。

書いてほしい記事を募集中

大会中にも適当に回りながらつぶやいていたのですが、なにか困っているトピックで助けのほしい技術的な記事を書いてほしいということがあったら、リクエストしていただければ時間のあるときに書こうと思います。結構聞いていると言われてみれば的な苦戦する要素があるようで、私の勝手な想像だけではわからないところが多いと感じているので。
とりあえず
・マイコン周辺回路の製作のポイント(Lチカをするまでに必要なこと)
・足立法を脱して経路導出をするヒント
・磁気式エンコーダの設計(EntranceでエンコーダICのデータシートとネオジム磁石の磁束の大きさからどのように諸量を決定したか)
あたりは耳にしたorわかっていない人が多そうなので書こうと思っています。他にあれば何かしらの手段で連絡ください。

その他雑多な感想

以下、箇条書きで雑多な感想を。

・弊サークルが久しぶりに団体特別賞を受賞しました。主に初心者向けにハードルを下げた標準マウスキットを作ったN先輩の貢献が大きかったですね。後輩へのフォローもしっかりしており私も見習わなくてはと思いました。詳しくは本日のWMMC Advent Calendar 2023で書いてくれていると思うのでそちらもぜひご覧ください。

・クラシックにも出たこともあってか、複数人から「トレーサは?」と聞かれました。某小学生トレーサからも「なんでやらないの」と言われます。この界隈怖すぎだろ。そうですね...とりあえず自宅にコースが置けないのが一番のネックですが、どういう構成が流行っているのかくらいはチェックしておきましょうかね。

・hさんマウスの方優勝おめでとうございます。どうやら2徹+αの無茶をしていたようで、限界開発はお互い様ですね。しかし、次は負けませんよ〜。

今後の展望

これでとりあえず今シーズンの地区大会はすべて終了しました。
現状としてはマイコンからコンセプトまでかなり変更した新作を短期間で2台製作し、そこそこ走れば良タイムが出るくらいの状態になってきました。これまでの中でもかなり素性の良いハードウェアを作れ、モーターの回し方もだいぶ上手になってきたように思います。
一方で、まだ細かい部分まで目が行き届いていないところ、そして上位とはおそらく決定的にレベル差がある要素(これはそれに取り組み始めたら話し始めるかもしれません)があることを、特に今回Lightningでコケたことで確信しました。
この差を縮めていくにはどうしようかと思ったときに、マシンの話もありますが、人間の開発の仕方、普段の過ごし方を含め一段階上のレベルに挙げなくてはならないときが来つつあるなと感じています。大会が迫ってきたときにまとまった時間で集中するスタイルでは、確かにこれはこれで集中したデバッグは性能アップにつながるわけですが、それでは場当たり的な解決策も必然的に増えていくわけで、日々足りない知識を補い、適度な緊張感を持って日頃からブラッシュアップを行い、直前期に追い込みをかける、くらいでないとなのかなと。そろそろ覚悟を決めるときのように思います。
とりあえず今シーズンの全日本大会までは期間が長くはないので、おかしな点を潰していくことを第一に開発を進めていこうと思います。

終わりに

遠慮しろと言われそうなくらい景品をいただきました。ありがとうございます。
1717モータはサークル員に譲ることが決まっていますが、MTLのエンコーダの活用法については検討中...。あとオシロスコープ手元にないのでADALM2000は結構嬉しいです。そしてタイヤは2台で削るのでいくらあっても良いです。ルーペも0603metric抵抗のはんだ付けの確認に有用そうです。どれも非常にありがたい。



最後になりますが工芸大の方々や協賛企業の方々、選手の皆さん楽しい時間や運営をありがとうございました。


明日の記事はtutuiさんの「ロボトレ機体を1週間で作らされた話」です。
作った話じゃなくて作らされたと書くところにすでに何かが漏れているような気もしますが、どんな開発話がでてくるのでしょうか。楽しみです。

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